【狂気】「さよならを教えて」を考察した

さよならを教えての全ルートクリアしたので、考察したよ

だいたいこんな話

 どのルートを通っても同じエンドへ行きつくので、最初のエンド以外は衝撃が薄れたのが残念。  日々壊れ続ける妄想世界の中で、少女たちとの決別を迎える。  何を選択しようとも、新たな妄想の堂々巡りで、主人公にとって現実は地獄巡りのような苦しみという話。  それを思えば、主治医トナエと実姉セミナに暗い展望を残し、再び新たな脳内設定で気持ちをリブートして挨拶する主人公を結としている様は闇芝居じみてて、ホラー的な面白さがあります。

考察

 妄想の少女たちの中で唯一、現実の人間である天使の少女、睦月がいることが設定の妙だ。

猫やカラス、捨てられた人形など妄想を仮託するに相応しい、

ほどこしこそすれ、傷つけられることはない他4人。

 彼女たちとは違い、同じ病棟で現実に顔を合わせる睦月は異端でした。

 主人公が妄想世界に教育実習期間という期限を設けたのは恐らく睦月の退院に合わせたのでしょう。  主人公が睦月に懸想しているのは明らかで、彼女が退院(天へ上る)までに自分の妄想と決別をしようとしていたのではないかと思います。

 だからこそ主人公の妄想でしかない少女たちは時に、こんなとこに留まっていいの?と口にしづらいことも告げ自己実現をしなければと自分を奮い立たせます。

だが異分子であるコンプレックスの源泉である姉、セミナとの接触が彼を刺激し、幼少期の慰めに小動物に振るった一方的な暴力と、家族に責め立てられて歪んだ性倒錯が妄想の少女たちへ怪物や歪んだセックスに変じます。

天使(睦月)を汚す、怪物のイメージは思春期に姉と家族に蔑視された経験からくる自分の性の汚さの恥の表れ。

 危ういバランスの中でダメ押しになったのが、主治医となえによる人の温もりを学ばせようという現実のセックス。

恐らく童貞であろう彼の殻を悪い意味で壊し、現実の自分を直視するに堪えなかった彼は妄想をたたみに入ります。

 可哀想な少女たちに手を差し伸べる優しい男。そんなストーリーの中でしか自分を許せない彼ですが、妄想から覚めかけ、少女たちに何を残すでもなく「さよなら」と言われる。

 恐らくは最初は退院していく睦月に並べるように更生の道を探り、妄想と「さよなら」したかったはずが、もうこの世界は駄目だと見切りをつけ、より深い孤独へ潜るための決別の「さよなら」にすり替わっていったのだと私は愚考します。

 彼が世界の支配者になるには自意識を狭めればいい、世界に自分一人しかいないと感じなければそれで支配は完了する。

 子供の夢想に立ち戻り、睦月が退院した後に、自分とは?自分の価値とは?という自問に再びの妄想リブートに立ち戻る。

 現実に立ち向かえず、「先生」という自分を少し控え目に上に置きたがり、生身の女には委縮してしまい、自分の殻に閉じこもる。

 ただそれだけの好感を得ることができない珍しくもない男の肖像ですが、現実には誰も傷つけないように注意深く繊細に生きている男が自傷と罰の中で苦しんでいる。

 サイコパスが暴走して人を傷つけるのが常道ですが、自分一人苦しむ世界で生きているというのが切ない