僕が彼女に出会ったのは春——
桜の舞い散る季節だった。
それまでの僕は他人を拒絶して生きてきた。
他人の事なんて知らない。
僕の事を知って欲しいとも思わない。
友達が欲しいなんて思った事もなければ、
彼女が欲しいと思った事も無い。
例えば学校——
同じクラスの人間といくら仲良くしていても、
クラス替えでクラスが離れてしまえば、
付き合いは少しづつ疎遠になる。
まして学校を卒業する事になれば、
同じ進路でもない限り滅多に合わなくなるだろう。
例えば会社——
毎日顔を合わせて、一緒に仕事をしていたとしても、
どちらかがその会社を辞めてしまえば、
会う事なんてほとんど無くなる。
……僕は知っている。
結局、この世の中には
『ずっと続く関係』なんてものは無いという事を。
人と人との繋がりが、細く切れ易い糸の様なもので、
どんなに繋ぎ止めようとしても
些細な事ですぐに切れてしまうという事を。
だから・・・・・・
どうせ、いつかは無くなってしまうものだったら。
はじめからいらない。
ずっと、そう思って生きてきた。
ずっと、そういう風に生きて行くはずだった。
でも……
僕は出会ってしまった。
僕の生き方を変えてしまう存在——奈川碧に。
なぜ彼女の事が、これほどまで気になるのか。
それは自分でもよくわからない。
だけど、これだけは言える。
彼女の存在が、
僕に何らかの変化を与えたのだと……
彼女を中心にして、新たな歯車が回り始める。
僕はそこで、何を想い、どう変わって行くのだろう。
